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詩誌 空想
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雨粒 野の花 ほかけ


透明なプレパラートに
スポイトで垂らした溶液の一粒をのせて
電子顕微鏡で
すみからすみまで観察してみる
含まれている成分を
レンズのピントをぴったり合わせて
覗き込む

万華鏡のような世界を
確かめる、味を
舌先で舐めるようにして
眺める
繰り返して
飽きることなく
何万回でも

分析したり
、もして

濁流 玖憂


腹を水面に出して
うかぶ金魚を数える春
きらきらの、ぷかぷか
君との時間は

浮き島が沈みかけて
片足が腐りかけても
大丈夫、手を差し伸べる

太陽が昇ったら、って
魔法のように繰り返す

腹を水面に出して
うかぶ金魚を数える春
ひとつひとつ、踏みつけて
向こう岸へ向かうの

おひれが沈みかけて
片足が腐りかけても
大丈夫、僕がいる

太陽が昇ったら、って
呪いのように繰り返す

いくら時間を共有しても
秘密ごとをふやしても
同じ場所にたどりつけない

ワルツ、それとも・・・ 雪 島 春


私は今しがた、
空気のような水の中を
天井からゆらりゆらりと落ちながら
やっと床まで沈んできました。

スローなワルツのような
もったいぶった沈み方でした。

水はまだかすかに揺れているので
私の髪もまだ動いています。

もう暫らくすると
双方止まるでしょう。

やっと落ち着けるのでしょう。

風もありませんし
暫らくはこのままです。

電線もじっとしています
町も息を潜めています



眠ってしまったのでしょうか。



夕陽だけが
先ほどの私のように
揺れながら落ちていきます


夕陽だけが
まだ生きているようです






あなたについて 嶋井やや


駅のホームには
家路を急ぐ何十もの靴
都会の足はどれも華やかで
軽やかにアスファルトを歩く

あなたは

、数足の
(それもくたびれた)
古い靴しかもっていない

、南向きの
年中日が差し込む部屋に
座っている
そうでなければ
家のどこかで立っている

、ウェーブのかかった
細くやわらかい髪を
不満に思っている

、左手の指がすこし足りない
それを私はすぐに忘れる

あなたの育てた時間だけ
そのルールは正しい
あなたの過去は
想像をこえて
私の未来を支配している

いつもすれ違うのは
私から
無防備な
あなたへと

私は愚かにも
詩情を言葉で埋めては
偽りばかりになって
内気な声を潰す



私の思う以上に
私の不在を恐れる

家や、
道や、空や、
見知らぬ人々、
あなたに映る世界のすべてに
私は溶け込んでいます



それを消すことが
決してできない

あなたの歩いてきた分だけ
あなたのルールは正しい
私に写る世界のすべてに
あなたは溶け込んでいる

トゥシューズの名残の
つぶれた爪
傷だらけの腕や脚
細い唇の上にある深いまなざし