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詩誌 空想
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春待ち蝶々 古月


あちらの通りにもこちらの通りにも
切り紙の蝶々が舞っていて
お母さんにとって、と言うと
あれは冬をつれてゆくのだという

ところで
だめになることを蟄居という
たまたま螺子の加減がね、どうかしらして
金銀と降る紙吹雪を拾っては撒き拾っては撒き
雨戸のうちはいつも雨降りで
お皿酒びん時々かみなり
いいえ、包丁は料理をするための道具です
うそうそうそうそ嘘ばっかり
私見たもん
そう
たくさん本を読みまして
まともな大人になれませんでした
二階の窓から餅を撒くおばあさんが
ひとり拾って食べている

さて
目抜き通りにはちんどんちんどんと賑やかなのが来て
肉屋の軒では子猫が生まれた(かわいい)
見て、
頬を塗る子の林檎病みたいなの
跳ねるの尻尾の生えたようなの
見て、
生まれて一度も切ったことのない
長い長い髪を切ったのよ
そしたらそこから先は簡単で
続きは滲んで読めなかった

あちらの通りにもこちらの通りにも
切り紙の蝶々が落ちていて
お母さんにとっていい、と聞くと
お母さんも紙切れだった
そういえば暖かな陽気ですねと
えりを立てて歩く私にも
ねえ、
鋏があれば春がくるのでしょう
またお嫁に行く姉さまのように
ねえ、
みんな桃の枝を折るのに夢中で
蝶々が踏まれるの誰もしらないの

ちいさな朝に ma-ya



やがて
みじかい雨は終わり
日のあたる森を
蜘蛛がわたる
宙にひびをいれながら
虹をつむぎながら
確かに違った私さえ
もやのかかる背景にして

果てた路上に
あなたのおもかげごと忘れる
ひたすらにあるき
疲れたら やすめる翳が
ぽたりと在るように
あなたもあなたのもとへと
お帰り、

夢のなかでは
いつも ひとり
観覧車にのって遠くのくにの
うしなわれた言語を
耳をすまして
聴いていた

芽が土をわけて
てのひらをひらくと
少しだけ もちあがる空
そうして軽くなったいのちを
ひとびとは春とよび
あたたかいと瞼を
とじている

朝方
こわれた百葉箱から
水銀があふれて
世界が終ろうとしていた



桜化粧 野の花 ほかけ


  黒いお仏壇のある 六畳本間の打ち抜きの
  瓦屋根のお屋敷の
  一つ手前のいつもの部屋に
  それは置かれて在りました

  頭を北に布団が一式
  こんもりと お山の様に盛り上がって
  誰か知らない人が 寝ていました
  家中の襖は皆開けっ放しで


  その女性(ひと)は
  微笑まないし泣きもせず
  只只、静かなお顔のままで
  物言わぬ 骸と成り果て

  母に良く似た人でした
  いつもより少し軽い気持ちが致します
  最早魂の無いそのお顔に
  わたしは 化粧を施し紅を差す
  よくよく見ると それはやはり母なのでした

  ほんのり淡くて ほんのり薄い
  母さんの好きだった 桜色の口紅を
  何度も、何度も、繰り返し
  指でなぞってあげました

  横に並んで添い伏しては見たけれど
  物言わぬ母は鴨居の上から
  ソロリと不思議に
  わたしを ジッと視ているみたいで

  ( あれは一体誰かしら
  ( これは一体誰のぬけがら


  今宵の闇が
  まだこの部屋に留まろうとする母を
  独りぽっちにせぬように

  灯明二つ 点けました
  お雛様の ぼんぼりみたいに 点けました



水溜り 五十嵐 湊


どんより灰色の空を濡らす
賑やかな駅前のショーウィンドウを濡らす
私の頬を・・・静かに濡らす


空が泣いているのか、私の心が泣いているのか


たくさんの雫の中に混ざり合う
一粒の雫
頬を伝った時、ほのかに塩辛かった


数時間前は二人で寄り添って歩いたこの道を
数時間後、私は一人で歩いている


華やかな喫茶店の窓ガラスに映し出された私の顔は
活気で溢れている店内とは驚くほど不釣合いで
気づけば、寂しげな空の色と同化していた


私は目を逸らした
窓ガラスから、現実から・・・



ポチャン



足元の大きな水溜りに映し出された灰色の空
いつの間にか、たくさんの雫は止んでいた


だけど、空の色は変わらない



水溜りに映し出された、私の心の中の様に・・・




かなしいはな 透夜


かなしいはなは
かなしいだけでは咲きはせず
おだやかな日だまりの粒子を
ぜんしんに宿して
ぽっかり
咲く

れもん色のカアネエシヨンを
いっぱい束ねて
びろうどみたいな冷たさなら
涙がこぼれた

あなたのいない日
かなしいはなが咲く
あなたのいない明日
かなしいはなが咲く
あなたのいないこれからずっと
ずっと
胸に
ぽっかり

惷 玖憂


皮膚の下、黒々とした闇を隠している、君はひたすら
手首をかざして傷を、みせびらかす

星も見えないし地下水がおちてくるもの
大きなトンネルよ ここはきっと
知らない生き物ばかりじゃないの

皮膚の下、黒々とした闇を隠している、君はひたすら
腹を開いて子宮を、みせびらかす

「目が覚めなければ、 死んでいるのとかわらない。」

ひんやりとした土の下、
春を待ちわびる虫たちを、
唄う君の声の、かぼそいこと……―――




震えながら戸を叩くひとがいる Kyo-ka+


雪が灰のように降りそそぐ日
わたしは震えながら家々を訪ねて回る

戸を叩く手から伝わる
(((がたがた)))とやけに響く音が
相手にいつも鍵をかけさせてしまう

ひとは無条件に
隣人を愛するなんて不可能だから
戸の向こうの晴れやかな顔を求めて
怯えと凍える両手を隠し
結果うすら寒い言葉をかけることになるのか

いつか青ざめた馬に乗る
黒衣の男が云っていた
「あなたの神は平等だから
あなたばかりを愛しはしない
御使いたちとの籤引きで
次に幸せになる人たちを
世界の中から選んでいるから」

男の言葉に涙したのは
きっとわたしの身勝手さに対してだった
誰かの不幸は戸に隔たれるのを言い訳に
見ないふりをしている愚かさの

この叩く手が差し伸べる
無償の愛に変わらなければ
冷たい風は吹き続けるだろう

だけど無性の哀を抱かなければ
差し伸べる手が熱を生んでも
相手を暖めることなどできない

(わかっているのに)

神はひとりだけを愛さないから
人はじぶんだけ愛されようとする

この灰のように降りそそぐ雪は
御使いたちの火に罰せられた
そんな罪人たちの残骸だった

ああ、
早く気づけていたらわたしは
招かれざる幽鬼にはならなかったのに

何が平等だと神を恨み
更に愛されようとした罰は

誰からも真に愛されず
得られない愛を求め彷徨い
凍えながら戸を叩くこと


雪が灰のように降りそそぐ日には
震えながら戸を叩くひとがいる

だけど決して開けてはならない
開けた者は二度と家には戻れない

明日 五十嵐 湊


今日で卒業。



そう思うと・・・当たり前だったこの教室が、急に当たり前じゃなくなったんだ。
ココロの中に涼しい風が吹いて、何故かぽっかり穴が開いたような不思議な感覚。



昨日までは全然普通だった。
『あぁ・・・明日で卒業か・・・』
そう口にしても、これといって寂しさは感じなかった。



この気持ちは本当に突然で・・・
まだ、もう少し・・・この時間の中に留まっていたいと思う。
何でだろう・・・?





あぁ・・・そうか・・・






この時間にはもう




『明日』がないからか・・・







Plusquamperfectum-Manuscriptum 葉月二兎


君が不意に込み上げた泡から獣の装飾は小刻みに揺れて

黒い非常線に浮かぶの、よ
 君の黄色いざらめきよ

水をすうために生まれてきた息子
 は、

隔たりをかきわける? 蜘蛛の形
 に、似てしまった恋人たち

僕らの使い分ける___(と、性別を聴いていて、)
そこからは角膜を削られる稲穂と同じ、
燃えて崩れて激しくていきました花と顔
 までも、触れられぬ雪と手をあげました

「ここがけっこう苦しいんだ。」

爪もあった 野原に突き刺します
リジウムの千切れた尻尾を奏でている
拾い上げたときだけを

ざらつく
格子戸からむき出しにする

眼の見えない巨獣___(時計、枢軸は時を刻まない)

断絶の中庭に抜けない針
 蛾が、四角い色を巻きつけていく
 蜘蛛の
糸でまねいた 遠出して
 マーガレットしか
知らなかったあたしの、
 水をすう ために生まれてきた子どもたち

(
革命の失われている記号。)

異なる音 縁の摩擦から逃れようとする
泊まっているし構えてした彼ら
布の張られた鉄杭に浮かぶのに
産まれたままの汚染されていました髪と蛍 あなた方の返却の晩

トロイに埋もれた火星の爆散したのは何故かしら、
ターンテーブルが雪崩に生え換わって

構わないで、スローモーションでイって

僕は君の黄色い体つきを確かめようとした

浮力を載せるように、シ
巨獸の爪を数えた
君の組織体

黒曜石の楽曲名、新宿は、音
 羽音
歌舞伎の女王蟻
に、ひっくるまれて飲み
 込まれたのは衛星状態の観念

嗚咽のナカの汚ならしい子、の

 構わなかったノ、よ、あ
の木立には黄昏が舞い降りてきました。
ゼロ戦の迫撃砲が聞こえない

(夏の飛沫に稲穂は七色になる)

君のマンション、くるまれて浄水槽は、
 獣の端は跨がって残さなかったのです。撃退された視線から
あったノ、わ。

射水から割れたらフレームが止まりかけておりました
 ふえるし、
 とびきれるし、
  踏み出せるのだし、しのげるし
 シのみえざる
君といっしょにいたいし、
 君のないし、は、
狂わないし、

シのみえざるしの音
が、シテって君の滞留した死骸がつまれる
のは獣

愛された
大理石の原子のすり抜ける白亜の沈黙でさえ
も、僕らの絶滅した愛は駆け巡ろう

弦子の鼓動する指先の冷たさまでのタイムラグを奏でている

君のハート

 時間は流れて 野の花 ほかけ




   むかしの人は

   文のやりとり

   
   届ける文は 人から人へと 手伝いで

   朝餉夕餉に 窯で湯を炊く 日々の暮らしに

   もののあはれを 覚えけり



   今では… 

   時間は 急ぎ足

   行きかう言葉は パッケージで運ばれ

   24時間 休みなく

   止まらない 時計の秒針みたいに

   ぐるぐる回って 動いてる



   大事なのは

   タイミングと リズムと スピードで

   とっくに 気持ちは 置き忘れ



   退屈な情報の 処理に追われて

   安さの波に 押し流されて

   それで 人は 豊かになったの?




   底の見えない「孤独のクレバス」

   覗き込んでいるのを 知ることが怖くて



   今日もまた 

   掌サイズの 窓枠に向かって

   足早な文字を…

   駆け足で 打ち込み続ける

   

だれもしらない 古月


六月の陽が射して
雲を払い
風は流れて
雨が上がる

濡れたままの
あなたとわたしは
ひとりと
ひとりで
ふたりだった


ふたつ並んだ足跡を
ひとつひとつ消しながら
終わらない思い出話を
続けていると
思い出せることも
思い出せないことも
あったことも
なかったことも
すべてが
ほんとうのことになっていく

そんな幸せがあってもいいと
ふたり
いまさら気がついて
すこし悲しくなって
また
ふたり
小さく笑う
ほんとうのこと
みんな
うそならよかったのに


歩き疲れてたどりついた
小さな浜辺には
いつか忘れた
きみとぼくがいて

黒い海に敷き詰められた
いちめんのひかりの
眩しさに目をそらす
あなたの瞳にも
海があって
空があって
足跡のない
ふたりがいる

さよなら
きみはあなたに
ぼくはわたしに
さよなら
ふたり
ここで出会って
もう
ここから
どこへもいけない


だれもしらない
六月の日に
だれもいなくなった
ただそれだけで

頬を濡らすひとしずくの
涙が滲んで溢れそうになる

おきざりのままの
きみとぼくが
いつかのように微笑んでいる

うた ふるる


あなたの背中が徐々に
まるくなっていくのを
みていた

うつくしい言葉だけを食べて
生きていけたらいい

あなたは死の影を追わない

鳥がうたを失って落ちる時
あなたの指は消えていく音符を書きとめるのに忙しい

あなたは何者の影も追わず
めったに
かなしい
と言わない

光る苔がまあるく
空に浮かんでいる

誰かに寄り添って
子守唄を歌いたかった
ねむる誰かのそばで
終わらない物語をしていたかった

うたは尽きたのではなく
休んでいるだけ

そんな物語

朝日の雫が
指からこぼれる
透かした紙が
眩しすぎる

朝には朝の再生
夜には夜の転生

海原にころがる鞠たち
の集まる場所で
人魚が拾った楽譜を
好きに奏で始める

月の昇るはずの場所には
すくわれた跡があって
誰かの夜を照らすために
盗まれていった

ねむるあなたの中に
蒼く照らされている
場所があった

仮面とわたし 野の花 ほかけ


   忍びよる 顔のない 不安が

   わたしの前を よぎるとき


   薄ら笑い 浮かべて

   軽蔑している

   付け込もうと狙っている

   仮面を付けたもうひとりの自分が

 
  
   昨日と同じ 朝が欲しくて

   地団太を踏む 子供

   おもちゃを取り上げられて 泣き喚く幼児

   お母さんの 帰らない日の 最期の夕焼け





   今では わたしは知っている

   ありとあらゆる 生きものは

   皆それぞれに

   決められた季節に 誇るのだ

   体内に隠された

   時計のリズムを聴きながら…



   その ほんの小さな秒針の指す音に

   わたしは…



   そっと 仮面をはずし

   物音を立てずに その場を 立ち去る

   



白道めぐり 古月


 
行き会へる不幸を悼むものあれど
生まれの幸を思うものなし


 *


嗚呼
漸く伸ばしたって泥濘みの底の
銀色が三日月の切先なら
それで何に成るわけでもなし


虚の中は暖かくやわらかで
しとりと濡れた肌に心地良い
女が云う
ねえ
奥へ往きましょうよ
だってこんな処では然も
覗いてくれと云わんばかりでしょう


喩い
食うや食わずの日を知らぬとて
何の罪でありましょうや
そんなに苦労が偉いと云うなら
川原の乞食にでもなれば善ろしいのに


女の吐息が鼻の奥をくすぐると
目の玉の奥の深い処が痺れ
白い靄の中から差し出される
長い長い腕のなお白いこと
行く先の見えぬ真白い闇のなか
不思議と心は安らかで
恐れはない


瞼を塞いでお遣りよ
何処の誰とも知らない
女が微笑む
人は死んだら仏に成るってさ
そりゃあ随分と嬉しゅう御座んすね
雨は強くなるばかりで
一向に止みそうにない


満開の桜が咲く
白い道の上を
わたしは手を曳かれ
歩いている
牡丹雪のような花びらが
舞い落ちては積もり
それがまた風に浚われては積もり
往く先に白い道を作る
手を曳く人の顔は知れないが
何処か懐かしい匂いがする
柔らかな手の平の感触は
いつか
どこか


何故生んだ
何故生んだと
鳥が鳴いた
そう云った


気がつけば
瞼を浸す泥の川にいて震える
腹の奥が酷く熱い
触れれば触れた悉くが痛み
凍える頬を叩く雨は温い


 *


白きみち御首は落ちて流るれど
都の唄をぞ口遊みける
 

少女シュトロオム 透夜


かつて宇宙を孕んだ波紋から
水底に差すひかりに向かい
少女らの流れ
それぞれに顕な大腿は内包する
原初より未来にわたる
眩い星
星の砂 恒河の砂 月の砂漠の砂
流れなす無限数の粒子に
溺れるわたしは
天地の開闢 転生輪廻
ディオニュソス オルドフィケス ファウストゥス
ありとあらゆる時代 宇宙の
わたしをさがし
なお
音なく少女らの流れ
わたしは一しきり
窒息する

** Bairthday ** 野の花 ほかけ


   もう...

   何十年も前の


   『 今日 』という日の始まりから

   わたしたちは 

   生まれ続けてきたのです



   あなたとわたしが 出会うために

  

   浮かんでは消える 水泡のような

   そんな「生」を 私たちは

   別々の場所で 離れ離れに 暮したのです



   あの日

   スクランブルの 雑踏で

   ふと うなじを揺らす風を感じて 振り向いたのが

   単なる神様の 気まぐれだなんて


   決して わたしは 

   思いたくもないのです

   (ワタシヲ映ス鏡ハ アナタノナカヘ




   今も続く 緩やかな 時間の中に 

   たおやかに 微笑む



   水仙の花のような あなたの笑顔が 
   
   いま わたしの傍に あるのです