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詩誌 空想
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二〇〇九年十一月

2009-11-29 冷えていくだけの部屋 やや
2009-11-22 憂うつ 古月
2009-11-20 冒険、恐怖 白玖
2009-11-14 恋欲 五十嵐 湊
2009-11-11 オープニング たもつ
2009-11-09 鈍感 五十嵐 湊
2009-11-03 式日 yuko
2009-11-02 疾患 玖憂

冷えていくだけの部屋 やや


冷えていくだけの部屋に横たわる
出来損ないの光の進入
灰色に身じろぐ
空気は水気に変わり
息をする必要もない

染まりつつある皮膚が
血脈でひび割れ、崩れていく
意識は部屋中に拡散し、充満し、、、
極めて静かに
呼吸することだけが許される

悲しみも喜びも、もう色めき立つ必要がない
と目元を弛めて
部屋中の私も、忠実に着実に冷えていく

思えば一番好きな季節は秋だった
どこからか始まる優しくゆるやかな喪失
土も冷たく目を閉じ命を封じ込む
人々は黙り込み
やはり少しずつ色をなくしていく

散った紅葉は鮮血のように、あかい
消え往くものは、どうしても美しい
パンフォーカスの世界は段々焦点を狭め
目前を通り越していた世界がゆっくり後退していく
あぁ、圧倒感とは、命のこと

太陽が壊れだした
光が消え往こうとしている
この部屋ももうすぐ赤く染まり
きっと色をなくす
冷えていく部屋で芽吹いた花は最期に色づき
冷えた瞳孔には、赤い地面が写る
消える前に全ては赤く染まる

腕を軋ませながら
懐中時計を取り出す
赤錆に塗れている
蓋にはめ込んでいた写真は黄ばんで見えない
針だけが真新しく光る


時計の針が進む
おかしな速さでことが進む

時計の針が進む
気が付けば側にいた人は今はいない

時計の針が進む
大切なものが不要になる

時計の針が進む
愛しいものが醜く歪む

時計自身も 少しずつ遅れていく


部屋が影をなくして
なり損ないの光で満たされている
薄暗いと呼べばいいか
それとも薄明るいのか
頭の芯が痺れて気にならない

淡々と無くなっていくだけの部屋で
私は、心臓がでたらめに時を刻み
まぶたが音を立てながら閉じるのを 聞く

憂うつ 古月


すきを覗けばあれあんまりで
だれもかれもがはらわたぬくい
こよい具合いが酷くよろしい
ひと巡りした頃合いの

あれは人より多いがわざわい
あれはかた輪を売りました
ありもせぬものどうにもできぬ
ひとつも減りはせぬという

睦ごと白じら赤あかと吐き
わたくしここ で死にましたれば
あんたの好きなおたのしみ袋
あけてびっくり変わりだま

雨の夕べが遠くへゆかれて
あれよあれよとはらわたぬくい
こよい具合いは如何がなものか
ひと巡りして頃合いの

冒険、恐怖 白玖


人生は、

冒険と恐怖の紙一重。


新たな挑戦。
次々とくるチャレンジする機会。
でも、その壁は高い時も、
低い時もあって。

壁は人によって異なって見えて。
ある人には簡単に超えられる赤ん坊用の壁に見えても、
ある人には壁の前に恐ろしいものが立ち塞がっている、
超えられないくらい恐ろしい壁に見えるかもしれない。

その壁を越えられなくて悩んでも、
でも皆はあっさり超えられるかもしれない。
「なんでこんな低いハードルも越えられないの?」
馬鹿にする声もあるかもしれない。

だからと言って臆したく無い。
恐れてなんて、いられない。
それこそ気持ちの持ちようで、
あっさり超えられる、ものかもしれない。

もし誰かが壁を見上げて立っていたら、
手を、優しく差し伸べて。



こうして人生のレールが出来上がっていくんだ。

恋欲 五十嵐 湊


パタン。


一人ぼっちの部屋の中に、空しく響き渡る音。
桃色の表紙の少々分厚い小説の扉を、私は閉じた。


その瞬間、無性に恋がしたくなった。
たった今読み終わった物語のような
苦しく切なくも、優しく甘い
レモンキャンディーのような・・・
イチゴミルクのような・・・
そんな恋がしたくなった。


誰に?
分からない。
誰に恋がしたいのか分からないけど
恋がしたくなった。
この世界のどこかにいる、誰かに。


物語を読んでる最中は楽しい。
まるで自分がこの物語の主人公のように思えるから。
だけど違う。
私は私であって、この物語の主人公ではない。


そう感じたとき、この一人ぼっちの部屋の中が
やたらと広く感じる。


誰かが隣にいてほしい。
誰かの隣にいたい。


誰かを愛したい。
願わくば、誰かに愛されたい。


掌の中の一冊の物語は
私の心に「恋」という名の欲求を生み出した。






オープニング たもつ




オープニング
どこまでも行く
つきあたりを右折
空港がある
  教師のAさん(仮称)は空港を黒板に板書していく
  重要なところは赤いチョークで
  重要だがそれより重要度の低いところは黄色
  重要ではないが変化をつけたいところは青
  教師のAさん(仮称)は自分の生活に変化を好まない
  いつも決まった形
  昔からそう
  「先生、昔とはいつのことですか?」太郎さんの質問
  「昔、の基準は人それぞれですよ」教師のAさん(仮称)の答え
  以降、「教師Aさん(仮称)」は「A」と略して表記
  「太郎さん」は昔からそのまま「太郎さん」
オープニング
どこまでも行く
人それぞれの基準
それぞれの形で

太郎さんは前から三列目に着席し
体には適正な範囲内の水分が保たれている
Aの板書する空港をノートに次々と書きとめていく
どこまでも行く
つきあたりを左折
太郎さんの肩、その向こうに
高く切り立った崖B(仮称)がある
  春のうららかな光の中
  以降「高く切り立った崖B(仮称)」は「B」と略して表記
  「太郎さん」はずっと「太郎さん」のまま
  Bからたくさんの人や物が落ちていくのが見える
  「きれいですね」Aは感想を述べながら空港を板書し続ける
  「落ちていくからきれいなのでしょうか、
  それもときれいだから落ちていくのでしょうか」太郎さんの質問
  「本当にきれいなのはそれを見ているわたしたちなのです」
  Aもまた体のいたることろに水分を含んでいる

太郎さんの生家の近くには牛舎があった
まるで誰かの余談のように
複数頭の牛が仲良く並ぶ日もあった
そして他の誰かの余談のように突然牛舎は壊され
牛たちは跡形もなくなった
Aが省略から開放され「教師のAさん(仮称)」を取り戻し
管制塔を書き終えたころ
滑走路を一人歩く太郎さんの最後の姿が目撃された
後には空港で埋め尽くされたノートが残され
細長くどこまでも
オープニングだけが続く


鈍感 五十嵐 湊


「好き」


全然気づかなかったんだ
自分の心なのに・・・


誰かに言われて
誰かに教えられて
誰かに問われて・・・


初めて気づいた気がした


「あぁ・・・そうなんだ・・・」


そんな言葉がふと口から漏れた


だけど・・・


本当はとっくの前から
気づいていたのかもしれない
だけど  素直に認めたくなくて


何故だか分からないけど  心の何処かで
「絶対好きになんかならないだろう」
なんて思いながら
無意識のうちに否定して
自分の本当の気持ちを
どこかへ隠していたのかもしれない


そして  知らない間に
自分の本当の気持ちを
見失っていたのかもしれない・・・




誰かに言われる前に



誰かに問われる前に





気づけば良かったなぁ・・・






式日 yuko


古ぼけた
街並みは静かで
ここでは
失われたものばかりが
とても美しい
夜のほとりを歩く
わたしは白い服を着て

広場には
踊るひとがいて
その中央には
赤々と火が燃える
わたしは
髪を切り
投げ込む
それが燃えるのを眺めている
ここには
昼がなく
炎のリズムが
いわば時間であった

広場を越え
どこまでも続く街灯が
通り過ぎるたび
消えていく
そして失われたものたちが
ふたたび失われ
それはいつまでも美しかったと
白い髪のわたしは
言うのだろう

疾患 玖憂


首を絞められている
内臓から見られている

私は生命を燃やす

光々の蛍光灯を翳す
悦びの悲鳴を上げる

突き詰めていく破壊
留まる輪郭

裂いている
刻んでいる
黙っている

私は幸せ