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詩誌 空想
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命の中で 翠蓮ツバサ


左の手を翳して
右の手で触れました
同じだけの、温もり

耳元の三つ葉に
風、蟻、花、
囁き声と
お喋り

まどろみの中で
せせらぎが歌う
光を、
称えて
左の手と、近さはそう変わらないだろう
右の手が、リズムを伝えた

たゆたゆ
たゆたゆ
たゆむ、水面

透ける瞼
熱を帯びて
少年のポケットから
右の手が、握った

とくとく
とくとく
とくん、流れる

群青の砂時計が
暗闇に零れてゆく
こぼしてゆく

ぽ   ぽ   ぽ
  た   た   た
    、   、    、

対照の右手は
爪の先から
白の、侵入

命の上に、零れ出した

左の手を翳して
右の手で触れました
左手だけに、温もり

今宵 怜








   月の光に音を飾ろう



   何もない夜が美しいから










露 ノいキ



御前と再び相見えたのは
見知らぬ、獣途 山
山奥 越えたその先の

小さな村の
小ぃさな茶屋で

見間違える筈無き、凛凛しき横顔


嗚呼、
指先に絡めた刃物が、習性に疼く

ぞ、
ぞ、
背筋を這い擦る 戦慄は
御前が見せた、只の微笑に
雲散霧消


見果てぬ旅路に、やつれた この身は
抗う術無く、広き胸に捕らえられ

鼻孔を掠める 首筋の匂いに
鈍った、脳裏を過ぎるは
共に迎えた夜明けの面影


嗚呼
、抱くな
この身を、擁くな

項に添えた刃先が 微々、揺れる


 次に瞳を交わせば、互いに敵 ぞ


別離を告げた 蒼き刻の
契は彼方

 宿命である
 対峙するは、己が決めた途である と

目尻を堕つる滴が、波紋で騙る
過ちに、恋、縋る私は

泣く紫陽花



哀しげな月影 乱れた世

私は影で逝く
嗚呼
只、紫陽花

御前と迎える日輪は
未だ 

嗚呼
未だ 、梅雨


定規は如何 まりっこ


乙んなが欲しいのは
有名銘柄品かオトコか
後ろの言辺を取れば双方
物に出来るであろうから
乙んなは手に入れる為
粧し込む

疾うに色の葬儀は終えているので
幾ら
口に紅を塗ろうが
瞼の上に蒼を重ねようが
何も変わらない

はて

首を傾げて
無の色彩を何度も塗り重ねる
あれは何センチの厚さだろうか

オトコもオトコ、
化粧をしているのかさえ
分からないものだから
とりあえず誉める
その言葉でまた
何センチか増えそうだ

紅葉の色を忘れたと抜かすのなら
海の色を忘れたと抜かすのなら
その口に、瞼に、
色を化す必要もあるまい
だから
死んだ

気付いているのだろうか
汚れた人には分かるまい

お前は何センチなのか
お前は前が見えているのか
問うてみれば良い

色は
死んだ

それは悲鳴にも似て clue


君の体の中の、小さな小さな擦れる音が
沢山流れ出して、沢山空気に混ざってるよ
色、みたいなものはなくて、舌触り、みたいなものが
細く遠くまで、伸びて、君は知らない顔をして
花に水をやっている
少し今、太陽が反対に動いたよ
傾いて、テーブルの上から水が零れ出して
声、みたいなものが、床を侵食している

ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ

透明な命、みたいなものが、雨の日の傘
僕は微笑むのを笑って、忘れた思い出とか探して
悲鳴だ、これは

焼け焦げた死体が梁に逆さに吊られて
太い木の棒で、メッタ打ちにされて
砲弾が飛んで世界を吹っ飛ばした
ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ
封の切られていない郵便物が空を覆った
パラシュートもつけずに人は飛び降りた
あ、

は、

神よ、神様よ、殺して下さい、あなたがあなたを殺せなければ、私が彼を殺すことなど出来るはずがない、神よ、ああ、あなたを殺して下さい、でなければ私を殺して下さい、滴った血で海を赤く染めて夕陽が泣いてしまう吹き飛んだ片足、、、神よ

ひずみを見つけたみたいに
花が開いて、君は笑った
時計が六時を告げた
忘れた思い出が消え失せたときに
もう一度花が咲けばいい
心の中の花が絶えなければ
それでいい
それ以上を僕は望まない
それ以上を、



答え、とその少し先に見える崖と
パラシュートもつけず飛び降りた人たち
憂鬱が、海岸線
咲くこともなく枯れた花が潮風に身を任せて
ぜ、ぜろ、ぜろ、ぜろ


少女が、何も履かずに、瓦礫の上を、歩いていく
私達は、少し遠くでそれを眺めながら、
夕陽が泣く声を聴いて
神様にそっと
私が人間であることを告げた
それは、悲鳴にも似て

明暗 古月


夜半
おもかげ
春は息も絶え絶えて
眠り



夢中
目明なれど色亡にて
紅で飾れど鯨幕
色とりどりの白菊
瑞々しく

祝言には皆いちように
狐の顔でものも申さず
人の形せど畜生腹で
白無垢などと



後夜
跳ねる
からだは漣む
白々と浅い日
息をつき
過ぎしを思う
枕に波を聴く
わたしは
雨後の


サイレント ふるる


あたたかい午後の光の中
お絵かき教室の庭
石膏の作品がたくさん並べられ
乾くのを待っていた
隅には花々
手入れされた幼い

わたしは白く乾いた石膏を型から外すお手伝い
小学生になったら絵の具を使わせてあげる
と先生がおっしゃったので楽しみに
石膏はほそいところはひびが入っていて
手の中でぽろりと崩れた
それから少しして
父は家に帰らなくなった

私たちは祖父母の家に引っ越した
転校先の学校で図工のじかん
絵の具を使わせてくれた
描いたのは
花の中のかぞく
先生はきれいだと言い
おともだちも上手ねとほめた

うれしいこと
けれど
それらのことに
音は
なく

あたたかい午後の光の中
お絵かき教室の庭で
今も
静かに繰り返されている

黄昏に生ける者達よ ノいキ


静寂に朽ち逝く 此処で出逢いし
幼き生命の灯火

小さな鳴き声は、大きな腕で私たちを抱き
滴で彩める目尻を 遥かなる刻の楽園に誘う


この出逢いがFortunaの、慈愛の花弁が導きしものなら
刹那の後に 夜月の絹を纏った、Nyxが訪れようとも

私たちは
唯、微笑み
その別離を愛すだろう



  瞬きの出逢い 屑星の別れ
  幸運の女神に寄り添う、夜の女神
  ほろり
  白百合の指先に紡がれる 運命の白糸

  Yggdrasillを支えし水面に揺らぐ、水晶の球体
  其処で廻る数多の車輪は 幾度となく
  女神達を導き続ける−−−



此処は Hesperisの都
黄昏に生ける私たちは
君とのFortunaを 忘れることは無い

黄昏に生ける全ての者達よ
別離が成す、朝の旋律を抱き

光の女神の腕へと
共に往かん

Ending yuko


紺青にけぶる空を薙ぐようによぎる、小型の戦闘機は燈色に燃える閃光をつれて。ゆっくりと浮き上がりはじめた海面に、硝煙にむせた妊婦たちが次々に溺れていく。あなたはやわらかな耳朶をふるわせて魚道を探す。冷たい海のそこを、天色の目をしたこどもたちがパレードのようにつらなって、透明なからだに透ける無数の静脈がふつふつと、沸騰しているよ。きみたちの削ぎ切れた甘皮がビルとビルのすきまをやさしく埋めていく。



白い鳥たちが残した羽を、ひとつひとつ空に、縫い付けていく配達夫たちの横を、僕はパラボラアンテナを背負って、そうだね、今世界は一番綺麗だと、つぶやきながら階段を昇っていく。平らかな海にぶつかって、つぶれる骨の音は新しい光のために。ねえ、そこでここで、高い建物から順に、倒壊していくのが見えるよ。海面は上昇をつづけ、境界がほろほろと崩れていくせかいで、ぼくの輪郭もまた螺旋状に崩れていき、行き場のない悲鳴がそこここに反響している。



弱いピストルが銃声を鳴らして。無数のあなたが空へ、飛び立っていく。乱立するビル群がうす青く発光するので、たまらなく飛び降りていく生き物たちの、鼓動が僕を抱いて、もつれた足を甘く噛む。耳の奥底を水が流れる音が聞こえるかい。海面の暗さがあなたの瞳に似て、反射する赤い光に僕は誘い込まれてしまいそうで足をはやめて僕は、海の深度をはかる正確な計器になる。



空を切り裂いていく、あなたがよく左耳につけていたピアスのような形の舟までもが飲み込まれていく海に空に朝に夜に。こどもたちの隊列はよりいっそう長くうねり、その熱が海をぼこぼこと唸らせる。浮かんだ妊婦たちの放射状にのびた髪は色がぬけてまるで花のようで、僕の背中のアンテナは狂った電波ばかり受信してもう使い物になるのかもわからない。瓦解するせかいの音がこだまする、僕たちの終焉を抱いて。



あなたを越えて僕はここでさいごの生き物でありたかった。戦いを終えて着床したばかりの精子たちまでもがみな死んで、あらゆるが破水して羊水がせかいを埋めていく。そうだ、僕たちははじめからだれもゆるされてなどいない。そんなことははじめからわかっていたんだよ。目の端を彗星がよぎる。すべてが壊れて今、あなたの鼓動だけが耳に遠い。

例える恐れ まりっこ



上段
吊るされている子
直射日光に刺されながら
おぎゃあおぎゃあ
おぎゃあおぎゃあ
私が抱えてあやそうが
重みは増すばかりで
腕が折れそうな気分
体に纏わり付くのは
汗なのか 涙なのか
声にならない声が
青い空を掻い潜る



下段
一先ずの事逃れてみれば
棒立ちの子
楽しそうに首を回す
一人で狂ったかのように
くるくるくるくる
くるくるくるくる
狂っているとしか言いようが無いので
私は止めることもなく放って置く



何なのか
夏なのか
夢なのか
何なのか

只 あの器の中でひんやり
掻き混ぜられて
粉々になりたいと
そう
思った


Three Notes 葉月二兎


 睡眠薬を飲んで眠る。その泥砂のなかで眠る鯨、その胴をくねらせる動き。僕はこれをシュルレアリストたちのように、半ば夢うつつで書いている。階差状に整えられ、管理された花園のステップ――ジャッドの彫刻のような――を、上がっている(もしかしたら下がっているのかもしれない。僕の垂直バランスは意味を成していない)。波羽の、ガラスで作れたのか小さい羽根をもった造形物が何匹か飛んでいるのが見える。あぁ、この光景は僕が幼稚園のときから知っている。あの頃一面に田んぼだった祖父との土地。そこで僕たちは赤蜻蛉の一群を見たのだった(ノスタルジーとは適切な言葉なのか。それはもしかしてツグミの身の光を透した、赤くなったあなたの瞳だったのではないだろうか)。蝉の呼吸する音が聞こえている。この森の中、僕は既に移民者となって、この息の分節をずらし始めている。僕はまだここにいたほうが幸せに思えるのだ(現時点では)。機械仕掛けの天使は僕の頭上をかすめ祝福し、僕を慰めてくれる(だけどその顔は、すべてあなたの顔であるだろう)。メランコリーとは言葉なのか。そして僕の歩くこの森を奥へと進んでいくのは……

 僕に翼の生えていないのは、遺伝子の生物学的進化によるものではなく、おそらくは重要な欠陥、もしくは罪によってひとえに切り取られているためであると思う。それは、治らぬ傷として「翼がない」。白亜の羽根が一つ一つ僕の中から生み出されていないのは、僕の背中にあるだろう傷口が、何も治っていないからだ。涙の成分に似た液体が、見えることなく常にそこから流されている。ときたま、僕は彼女に抱きつかれることによって、その流出を防ぐことができ、たぶんそのときだけ僕の背からは翼未満の羽根体と呼ぶべきものが形成され、彼女のことを包んでいたのであると思う。

 枝葉態が形成されてきている。それも僕の馬鹿げた詩節と彼女の声の音節との裂け目から、指のなぞった跡に。再生とは常に過剰であるように、象牙質の瞳が誰よりも先に朝の光(たとえば君が、月を仰いだ夜から数時間立った頃)を思い出す僕の記憶に彫りだされている。僕は眼によって夢をみることに慣れ親しんでしまった。湖畔に青紫の羽の散らばっているのが見え、傍らに咲く霞草は天使の脊髄から湧き出る重油のような液体を吸い取っているのが分かる。化学式で示されるような既知の暖かさが僕には足りていない。

冷たいルポルタージュ clue


明かりを消した部屋
カーテンの隙間から
猫が月を見ている
彼女の飼っている 黒い猫
うっすらと浮かび上がる
陶器のような彼女の背中



昼が人の表側を照らすのだとしたら
夜は人の裏側を照らし出す
その掌の上に くっきりと
浮かび上がる
暴力や、渇きや、飢えや
開け放たれた窓




例年よりも涼しい夏は
過去を振り返ったときの
胸の焦がれではなく
その間延びしてゆく私の精神
弛緩してゆく私の器

何十枚もの忠実なルポルタージュ
失われた大切なものは
まだ大切なものなのだろうか
これは私たちに科せられた
冷たい死刑



明かりの消した部屋に浮かび上がる
彼女の美しい背中には
幾通りもの私たちの闇が


まだこの掌にある大切なもの
守らなければならない大切なもの
カーテンの隙間から月明かりの方へ
月を見つめる瞳から零れ出して
誰だかの
代わりに座って
ひとつだけ聞いてみたいのだけど
自業自得を唱えた彼に
自らに科せられるべき罪は
どれほどなのかと

明滅する夏 やや


点、滅
 明、暗
点、滅
 光、闇

陽の光は忙しなくありとあらゆるものを照らす
あまりの慌ただしさに
目で追うことも出来ずに日は沈む
ガラス越しの世界は、時々私を引き込もうと手を伸ばす
夏は若い、また無邪気で、死を解らない
だからいつまでも殺しては生かす
薬とは薄めた毒である
ということを、私はいつも忘れかける



輝く光の中で、心はあまりにも容易に奮い立たされる
夏の励ましが強すぎるからだ
いつだって優しくありたい、強くありたい
言葉をその為に使いたいと思うのに
いつも書く理由は書いたものに追尾する
どちらも全体の一部なので拘る事はないのかも知れない

結果、呼吸をするように楽しいことをしたい
思い通りに生きたい、喜びたいという
澄みきった欲望を爪で弄ぶ



字を追うことに慣れすぎている
悲惨な事件が簡単に文字の羅列として収まる
騒ぎたてるよりは残酷でありませんようにと願う
何百枚も書き連ねた2週間の事柄は、口にするには10分で足りる
結局分かって欲しいことは
決して頭蓋をすり抜けることはないのかも知れない
何かを伝えるには発するしか手段がないのに
発した瞬間にそれは伝えたいものではなくなってしまう

永遠に自分の影を追いかける
答えられないなぞなぞを問われる



夏はいつだって名残惜しそうに尾を垂らしているのに
掴もうとした時には影も姿もなくなっている
夏は女神に似ている、強く美しく、そして幻だ

私の夏は女神が引っ掻き回した寝室に似ている
片せるものは山ほどあるれけど、割れた花瓶は戻らないし、
その記憶も消えることはない
女神とは、やはり偶像でしかないのだろうか



夏に美を探すのは簡単だ
ただ視線を前へ向ければいい

視界を彩るように陽炎が佇む
スポットライトのように日が照らす
海が称賛するように輝く
木々が尊く活き活きと風に揺れる

夏は、否定の余地なく美しい
夏は、光を持つからこそ、闇も持つ
夏は、常に明滅している
夏は、濃縮した薬だ

点、滅
 明、暗
点、滅
 光、闇

「YESかNOで答えてください。
あなたが次に答えるのはNOである」*1


*1ラーメンズ第14回公演「STUDY」内 「QA」より

black onyx ノいキ





目前には 寂れた獣道が腕組み
足元には 萎れた花弁が嘆いております

御姉様、御兄様

あの 紅の果実の彩を纏った
稜線を越える迄には、と
私と云う、幼子は
小さな胸で祈りを馳せる

逃げ 置き捨ててしまった、家屋は
今頃には、運命の慈母神が
戯れに転がした林檎に 影無く潰され

この身を模りし 父母が
か弱き鈴の音色で、亡き崩れているのでしょうか


振り返れば 月灯の家路
止まらぬ 汚れた裸足

・・・御姉様
・・・御兄様

貴方は何処へ

今朝には 慈しみの日輪に寄り添いし
あの、懐かしの稜線は
闇夜 愛しみの星屑に、抱かれております


嗚呼
運命の慈母神よ

熟れ過ぎた 早生の果実
何故、お与えになられたのでしょう
楽園には程遠い、この地では
過ちの種子に生ると 知りながら


眼下で 紅蓮のヴェールが円舞する
踊り子の指先とる、愉快な剣の嘲笑


 「Lo siento mucho...」


私と云う、幼子の
小さな鼓動に 追悼の射手座の矢先


 「Muchas gracias...」


追憶の天秤座 宛てを失くした、綴り
目尻に柔く零れる 滴に滲む


下弦の月に導かれ、往き付く先は
まだ 看えませぬ

幼子が弔いし 刻の頁が輪舞せぬように
小さな胸で、馳せる祈りは
貴方の傍らへ

今も、未だ
貴方の 胸へと・・・




.