×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

詩誌 空想
もどる   購読方法   バックナンバー   掲示板   投稿掲示板

雨香 ことこ


後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、
を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたくなる

ぽかりと浮かぶ満月は
ひるまのうちに含んだひかりを吐き出し
みずみずしく夜の反射率を支える
この町でさえも
はねかえる声はこだまして
まばゆい波紋を描き
そのすき間を
犬の遠吠えが縫っていく

ひたひたに注いだソーダ水の
水面へ昇るいきおいで
生まれては消えていく
を繰り返す
紫陽花は庭で
今年もまた雨を手繰る
ひと知れず
栄よう分を蓄えながら
ひいやりと
裸足の土の感触が咲き
どこまでも透明な闇を迎える

プロミスドサウザンアイランド 三浦穂香


拝啓
あなたのラウンジを拝借致します
だからさよならエンターテイメント
二番煎じの視覚情報立ち入り禁止
そうはいってもハイビジョンに映りこむ水晶の洞窟から
ただでさえ広くない心のあちこちを素性も知れない業界人に蹂躙されてるマイサウザンアイランド
財宝はどこだ?どこだ?
タマゴ一つ渡すもんかとドンパチおっ始めたって
原住民はシャカシャカ振られて抵抗虚しく呆気なく
細切れの本音は地に沈む
あらら気が付けば自分が心の一部にされていたりします
かしこ

瑞々しいサラダにかける言葉はありましたか?
無垢な祈りに振りかかるのは
残酷なサウザンアイランドドレッシング
でもきっと望んで着飾ってるんだ
そうやって
あれもこれもどれもそれもとチェキポキシェキシャキ!
気が付けば汚れていくグリンヒル
リソースとレスポンスの下敷きにされた青い日々達も
包み込まれてお洒落な物言えぬサラダになっていくね
それでも
サウザンアイランドに隠れすんでいた
ほのかな約束

「あなたが好きです」なんて言ってくれたなら
「じゃ、これ飲んでよ」って差し出すのはみじん切りのソース
まずは誠意を示してくれないと
姿は現さないの
わたし

無題 ナツキ


台所から死にかけの換気ファンが悲鳴
扉越しに突き刺さる
脳内で増してゆく
生温い繊細さが
足掻く保身の裏
金切り声は自業自得を叫ぶ
蛍光灯のジジィと鳴く
四角いコンクリの部屋
白々とした壁紙
頭に響く
冷蔵庫の羽音
ベランダの向こう
竹藪は笑う
自己嫌悪なんて存じません、と
重い首をゆるやかに
机の上、赤い時計、オレンジの秒針
追い迫る、刻まれる
隣の住人は洗濯機を回す
飛び散らし、引っかき回す
増える、増幅する、共振する頭蓋
口から出た言葉の、バラバラ頽れる
知りません、何一つ、何一つ
こめかみを抑え込む指先
エナメルの爪が肌を噛む。

間違い部屋 まりっこ


浸して上下に揺さぶって
美しい皮を被る
どれが本物なのか
私には分からない

裂いて千切って放り込んで
醜い器を満たす
どこが狂ってしまったのか
私には分からない

粘着帯でも貼ってやろうか

此処は貴方の部屋で有り
貴方の部屋で無い

間違いなのです

瞼に付いた付睫毛は気にするくせに
他人の視線は御構い無しで

口元に付いた凝乳は気にするくせに
空気の匂いは御構い無しで


無表情な人々を乗せた部屋は
がたん ごとん

間違えた方向へ
進みます

死海 ことこ


いつか一緒に死海に行こうと
あの人が言うものだから
いつかっていつだろうかと
わたしは鼻をくすぐられる

あまいあまい
ほっとみるくのにおいは
たいようのように
あたたかくて
あつくて
とてつもなく
おもたい
おもたい
おもいおもい

はせる

沈殿した
こどもたちは
どんなに混ぜても
溶けきれなくて
ぱちぱちと
まばたきをするたびに
星屑のようなお塩が
飽和していく

ほっとみるくは
きらいです
いやにあまくて
おなかにたまる
ほっとみるくでおぼれてしまえば
きっとからだじゅう
べたべたで
もうこどもじゃないんだから
そんなの
たえられない
たえきれない

ここでは
どんな生き物も
生きることができないのだと
静かな墓標に
人々は浮かぶのだと
ね、なのに
あなたと手をつないでいれば
クラゲみたいに
からだを透かして浮かぶのも
悪くないかもしれない
なんて
思い描いた真昼のひかりは
波紋のように広がる

ひろがる
ひろがったのは
わたしのほうで
いえ
むしろいんりょくによせられたのであって
てをはなしてしまえば
しずんでゆくのだと
おもっていたのに
おそれていたのに
おもいおもい


拡散する
夏の影を
静かに剥がせば
生まれたての皮膚は凪ぎ
そうして影は
はじまりの淡水へと
還っていく

本能 古月


悲しい人の夢を見て現実を知った
取り繕う言葉では欲情を隠せない

断片の集積で想像する宇宙と放物線
そのなだらかな曲線に肌色の夢を見る

人間の、人間の生殖本能が……
僕の根本が話し始めるけど
それはたぶん僕じゃない

優しい人の声を聞いて目を開いた
取り繕う笑顔では軽蔑を隠せない

記憶の集合で形成する始原と暗黒
その眩暈めく深淵に桃色の夢を見る

人間の、人間の生殖本能が……
僕の心臓が語り始めるけど
それもきっと僕じゃない


粗末な命を大切に扱えば
劣等感に圧し潰される
無価値な癖に平等を謳い
一人前の顔をして歩く
醜い心と醜い顔と醜い体
取り繕う声も
僕じゃない

人間の、人間の生殖本能が……
僕の根本が話し始めるけど
人間の、人間の生殖本能が……
僕の心臓が語り始めるけど
人間の、人間の生殖本能が……
僕の脳髄が唄い始めるけど
人間の、人間の生殖本能が……
あれもそれもこれも僕じゃない
僕じゃない
僕じゃない
僕じゃない


愛し、愛され、愛し合うことに
人間の価値があるのだとしたら
清く、正しく、美しい人よ
僕の心がわかりますか

薔薇永唱 透夜


薬指に
白銀の荊を這わせ
其の棘を
愛と云ひませう

肌や髪や瞳に
薔薇は咲き

血や肉やこころに
棘は痛み

やがて擦れ傷つき褪せて消え失せる
永遠

其は 悦びよ
契りませう あなたよ

オンリィレストラン 水瀬


一足のテーブルに
二脚のウッドチェア
一冊のメニュー表に
二品だけのメニュー

オンリィレストラン
忘れないで
ここがあなたのレストルーム
忘れないで
ここはいつかの待ち合わせ場所
忘れていいよ
作りかけのレシピ
もう忘れていい

一人の影に
二色の窓
一つの道に
二人の足音

オンリィレストラン
変わらないで
日常の中のレストルーム
変わらないで
温かいままのフルコース
変わっていいよ
下げた食器を洗い流して
もう変わっていく


広告を流せば賑わう店内
いらっしゃいませ今日は
喫煙席もございます
満席ですのでお待ち下さい

同志を募ってかたちを創ろう
お皿が割れても怒らない
お疲れさんだねまた明日
君がいてくれて助かるよ

静けさだけが残る閉店後のキッチンは
オンリィレストラン
今は僕一人だけ

窓の光で目を覚ます開店直前フロアーは
オンリィレストラン
僕達だけの場所になる

オンリィレストラン
朝を拓くよ
準備はいいかい?
おはようございますから始めましょう

春の病 古月


咲く花 咲かれぬ花 何方も花に違いはないけれど
此んなにも胸を掻き毟る様な苦しみ悲しみは一体何に故なのでしょう

季節外れの風鈴の音が向う通りの軒先で鳴るので
何とも無しに目を遣れば外は真夏と見紛う有り様で
白い日傘を差す山百合のような美しい人が往来を往きます
未だ花も散り切らず 炬燵も仕舞わぬ内だというのに
物思う侭に午睡を貪る暮らしで 暦にも愛想を尽かされます

誰彼刻になると何処からともなく遣って来ては
餌を強請る三毛も近頃は頓とご無沙汰で
如何した物かと案じていたら知らぬ間に所帯を持ったらしく
喩え貧しくとも人様には頼らぬ そんな暮らしを始めたようです

私と母との二人きりで囲む夕餉は酷く心寂しくて
花でも飾りましょうかなんて 話をしたりもするのです

姉さんの振り子時計がお嫁に行って
代わりに私が揺れるのです
ぼおん
ぼおん
ぼおん
ぼおん


 *


見るものや聞くものの尽くが脳髄の奥深くに仕舞い込まれて居て
到底取り出せぬうちに人は其の一生を終えるのだと言いますが
一度然うした妄念に取り付かれてしまえば其れはもういけない
大の大人が昼の日中からぼんやりと白日の夢に耽溺るのです

薄平らい板張り一枚隔てた下の底無しの淵ばかりが気懸かりで
其処には何が在るのやらと日々暗い水面を覗き込むのですが
ゆらゆら揺れる水面にはぽかんと口を開けた痴呆の面が映るばかりで
何処の何方が見ても立派な気違いの出来上がりという訳なのです

御前舞 水瀬


在れ達は
咲くも散るや
散るほどにまた飾るや
栓無き侭事に飽くことはなく
恋に酔うては愛に狂ひ
歳月の厚みはましらいましらい真水に毒されよう

何を笑うと申すか
逝く者に知恵を授け
生ける者に無知を与え
手前は御前のお膝元で
滑稽に舞うだけの黒子よ
如何せん
依りて鼓舞するも黒子よ
此れは笑わずに居られまい
おしらい為らば
いづれは剥がれ落ちようぞ
醜い狸が覗こうぞ
剥がれ剥がれ枯れ墜つるものと知れど
十重と二十重と塗り重ね
御前は狐と成りようか
は は
眼に写り込む濃淡総ては此れ霞
手前は即ち朧の贄か
然らば御身に捧ぐ四肢の庶
何処へなりとも散るがよいわ
末は花を削がれ葉をむしられ根を燃されような
は は は
いづれ御面からは根が生えよう
耳壺から枝を伸ばされや
口から葉を 葉を 葉を 葉を 葉を繁らせて
ああ御前よ花になりや
あ あ
水は与えなや
水は与えなや
水は与えなや
あ あ
枯れ渇れと墜つる花が実を結ぶまで
あ あ
酒を浴びせかけたもう
酒を浴びせかけたもう
酒を浴びせかけたもう
せめて宵のまつ毛が垂れるまで
御前の美醜に酔いたもう
ましらいましらい御前の面に欺かれような
は は は は

愛でたやな
愛でたやな

擬態 リエ


花の匂いに誘われ
蜜を喰らい
花の姿に誘われ
身体を食われ
てふてふ鳴き沈む翅

劣情 古月


うすべにいろの水を湛えた浴槽に浮かぶ君の肌から
剥がれ落ちていくはなびらを拾い集めるうろこのない蛇は
白く汚れた脈打つ肌を隠すように染めた恥じらいの色を
閉じた瞼から滲んだ泡のまるいかたちを覚えている


 *


君に生まれる前の君が見る夢の続きに君が選んだ
十八年前の六月の雨の夜に君を産む女になりたい

赤色プライオリティー まりっこ


遠くに灯る
赤信号を見つめる子供たちは
夕陽だ

両手を透かそうとする

大人たちは
如何も
赤と青の区別がつかないらしく
御構いなしに
足早に
通り過ぎていく

耳に挟まった海は
水平線をも真っ逆様

指に付着した悲しみは
今にも狂って動き出しそう

明日という塊を
ぽちゃん

放り込み
私は人生を自炊する

バスに乗ってます 水瀬


バスに乗ってます
旅のお供はセシルのポーチ
あの人から戴いたのですが
未だに何もいれる事はなく
中身はいつも空のまま

窓の向こうを見やれば
どこへ向かうかわからないまま
時も僅かに
知らない何かが増えていき
馴染みの何かは遠ざかる

バスの中には
たくさんの人がいます
無口な人達だけれど
皆それぞれの場所があるのでしょう
私は?
バスは
やって来るの?
去っていくの?
当然
誰も答えません

トンネルに差し掛かりました
突然の暗闇
走り抜けていく黄色蛍光のライン
時は遡るの?翻るの?
不安定な輝きはどこまでもどこまでも続いています

バスが速度を落としました
衝突事故だそうです
無口な乗客はそれでも無口
まるでそれが当然だったかの様に無反応
障害物のすれすれを
ノロノロと
バスはそれでも動きます
飛び散った硝子の欠片が乱反射してとてもとても綺麗で
だから涙が止まらなくて
だから潤んだ硝子はキラキラキラキラしていて
トンネルの中の
バスの中で
雨に降られたみたいで

不意にあの人の言葉を思い出す

バカみたいだ

それでもバスはノロノロとしていて
それでも硝子はウルウルとしていて
なのにポーチの中は空のまま

突如わぁっと
あれほど無口だった乗客から歓声が上がった
バスはいつの間にかトンネルを抜けていて
午前の日差しを全身に浴びながら
桜花乱舞の渦をくぐり抜けていく
皆一様に
駆け抜けていく春へ手を振りながら
それぞれが出逢いの
或いは
別れの言葉を口にしていました

あの人にずっと言いたかった
これは後悔じゃない
って
空っぽなのは
想いじゃない
巡る春を迎えるための準備です


いつの間にか
空色ポーチに
はなびらが一枚

「君の声…」 亜加莉


今年、同じクラスになった君…

君の声を聞くだけでなぜかほっとする。

君が悲しんだら、私も悲しいよ…

なんなんだろうこの気持ち?

「人間って、いうものは」 亜加莉


人間って、「ボールペン」みたいだな。
ボールペンは、インクが無くなると、

使われないよね?
友達だって、飽きたらほったらかしなどになる。

でもね、インクを交換されるとまた使うよね?

新しいボールペン(新しい友達)を買うと(作ると)そっちにいっねしまう。 


人間とは、不思議なものだ。