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詩誌 空想
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深海魚、恋する窓辺 玖憂


蛍光灯に反射したサランラップの灯は美しく
此れを貼れば、世界中美しくなると
少しでも此処を好いていられると、
幸せになれるのではないのかしらと
予感し、君を恋慕う気持ちがマーブル状となって……

僕が現実を追うと、途端に君は悲痛な声で泣く。
目を覚ましなさいと叩き起こされ、
現実を追い求めれば、途端に世界は僕を気違い扱いする。

真暗闇に潜むために、自ずと退化させた瞳を
身につけた小さな発光器を
小さくなった筋肉や細胞を
僕は其れらを、罪だとも、
罰だとも、認識しておりませんでした……

君が辛くないように、僕は眠りから覚めたのです。
僕というシェルターで、この残酷な世界から君を守り
包み込み、美しい物しか目に入らぬよう、
君が少しでもこの世界を愛せるように。

パクリと開いた傷口や、複雑な色のケロイドは
サランラップの単純さとは違い、もっと豪奢で素敵ですね。

いつしか君は、僕に泣きながら教えてくれました
『美しい』と口にすること
『生きる』ということ
『僕』という存在、其れこそが……


異形の発光器を、君は大きなハサミで切りました。
辺りは愈々暗黒さを増し、蔭りが身を焼きます。
斯様に暗い此処は、果たして本当にこの世でしょうか?
人間の物ではないらしい脆弱な筋肉では、
もう二度と海面へ顔を出すことは無理でしょう。


いつしか君は、僕に泣きながら教えてくれました
『僕』という存在、其れこそが

『罪』なのだと

佇む人 まりっこ


青い目隠し
黒い束縛
何時までも
纏わり付いて
取れやしない

私が
棄てられますよ

告発しても
その人は
一向に返事をせず
一向に立ち退こうとし無い

代わりに私が立ち退いた

次にお会いする頃には
部品と化しているでしょう

佇む人は
もう直ぐ
逝ってしまう

睡恋(推敲前) 水瀬


傷口から水を吸い上げて花は咲き
可愛らしいリップカラーで色づきながらも
散り際は
いかにも私らしく未練気に
ポタリポタリと渇れていく

睡恋 水瀬


傷口から水を吸い上げて咲く花は
愛らしい春色に染まりながらも
散り際はいかにも私らしく
身を切る痛みを遺し ジットリと枯れる

平和なヒビ(改定) 水瀬


全国どこを捜しても平和そのものだったので
本日の朝刊は刷られなかった
それが一週間続いたので
マスコミの平均収入が18%下落した
さらに一ヶ月経った今も信号無視一つ見当たらない
交番が4000件潰れた

一年後には信号機も横断歩道も消えた
三年後には消防車が博物館の展示物となった
何一つ事件は起きない
4年号に裁判所は養護施設になった
5年後に六法全書は永遠の火に投下された
4月1日は無法記念日となった
真の自由による平和の幕開けだ
首相はその椅子を海へと投げた
母なる海に誓いますと
家族のために尽くしますと

それからさらに5年たったある日
とあるファミリーレストランで
店員がお客に水をこぼした
これは
事件だった
平和を脅かすとんでもない悪事だった
許されない事だ
悪の芽は潰さない限りまた生えてくる
小さな町が人で真っ黒になるほどの衆人監視の中
彼は生きたまま燃やされていった
続いて店内の店員も店長も同じ様にして一人一人
焼かれていった
遺族達は炭になった骨を踏み潰し
泣いた
なぜこんな罪を犯したのかと
憤慨していた
しかし遺族もまた同様に焼かれた
これは悪の血だ
絶やさねばいけない
ファミレスの店員の血筋は一つの県に集中していた
この県がすべて悪いのだ
絶やさなければいけない
清めたまえ
同県は海の底に沈んだ

そしてまた我々は平和を取り戻した
以来20年
なんの事件も起きない

平和なヒビ 水瀬


全国どこを捜しても平和そのものだったので
本日の朝刊は刷られなかった
それが一週間続いたので
マスコミの平均収入が18%下落した
さらに一ヶ月経った今も信号無視一つ見当たらない
交番が4000件潰れた

一年後には救助という単語も広辞苑から削除された

そうして5年たったある日
とあるファミリーレストランで
二分経っても水が来ない大事件が起きた
店舗は全店閉鎖し
当店店長は満場一致で死刑となった
裁判所も警察も言葉そのものが消え失せた昨今なので
被害者は責任者を店外へ連れ出し告知したのだ

小さな町が人で真っ黒になるほどの衆人監視の中
彼は生きたまま燃やされていった
続いて店内の店員も同じ様にして一人一人
焼かれていった
遺族達は炭になった骨を踏み潰し
泣いた
なぜこんな罪を犯したのかと
憤慨していた

二分経っても水が来ない大事件
以来ニ十年経つが
未だ何の事件も起きない

潮騒 ことこ


海に沈殿した子ども達を
耳かきで掻き出す
「わたし早くママになりたいの

餌を求めるように
口々に主張する子ども達は
飽和した酸素に触れたとたん
波に揉まれて白い泡になる

灯台の下で
何でもないふりをして
子ども達に道を指し示している
あれは私だ
「どちらが北北西ですか

尋ねられた日には
決まって
耳鳴りが止まない

垂れこめる曇天のもと
遡及していく
風は乱れる
ジオイドの存在を信じていた
海はべろりと剥がれて
両耳を手で塞げば
私の中で
潮騒が
うごめいている

食 古月


むかし
どうぶつはひとごろしで
ひとはどうぶつごろしだった


サーカスの暮らしは楽じゃないよ
パパもママも知らないんだ
でも僕は悲しくなんてないよ
だっていつかきっと

かわいそうね
みてらんないわ
お母さんがそう言ってチャンネルを変えると
港町ではたくさんの小魚が網にかかっていて
価値のないそれらは肥料になるらしい

それでは今日の運勢を見てみましょう
二本足の動物たちがなかよく駆け比べをして
ライオンは今日もウサギに負ける

早く食べちゃいなさいね
片付かないから

きのう
ひよこという鳥の本を読んだのに
僕はその習慣をやめられない

食卓の真ん中でうつむいた花が
さっきよりも黒ずんで見える




移動動物園の檻は静かで
誰に咎められることなく
僕はすべての鍵を壊し


移動動物園の檻は静かで
誰に咎められることなく
僕はすべての動物を殺した

豫罪 玖憂


バッタの手足
魚の睫毛



目眩む 『退化』



脆い発光器
虚弱の唇


可笑しいと嗤うならば

どうぞ、罰してください



融けゆく 『闇愚』




ホントの神様が


ボクの前で、微笑んでも

外へ出ましょう 水瀬


ぽりぃちゃん、天井、枕、暗転、暗転、
天井、ぽりぃちゃん、目覚まし時計、クローゼット、
アンダーウェア、ポロシャツ、チノパン、パーカー、携帯電話、
クローゼット、カーテン、窓、ベランダ、ソックス、歩道、
手を振るきみ、携帯電話、窓、カーテン、ドア、ドアノブ、
キッチン、汚れた食器、汚れた食器、汚れた食器、汚れた食器、
湿ったタオル、鏡、洗面器、暗転、窓、ベランダ、
タオル、暗転、洗濯物入れ、衣類、衣類、うさみみ、衣類、タオル、衣類、着ぐるみ、衣類、
衣類、洗濯機、廊下、天井、暗転、玄関口、スニーカー、ドア、鍵穴
暗転、暗転、靴箱、洗濯機、ドア、
引き出し、紙、紙、ゴミ、ゴミ、メモ、レシート、引き出し、
食玩、ポリキャップ、おれぱんだ、ぽりぃちゃん、引き出し、
携帯電話、電話機ディスプレイ、着信、暗転、窓、ベランダ、
歩道、首をかしげるきみ、目を丸くするきみ、
手を振って止めようとするきみ、目をふさぐきみ、
暗転、自分の、スニーカー、歩道、泣き顔のような怒り顔のようなきみ、
笑顔のきみ、と、手を繋ぐ

朝露 水瀬


ゆうびにいざなわれしあまがさのはなるや
さくつきのあおきにそまりたりて
やまかわの
ながるるはるのあたらしきは
つゆくさのういぎょくになりたり
ややとしてたわむえみなど
はづきのきみによりそうて
てらしたるほどのむなしきよ

よいのあぜのみち
ぬけぬとおれぬとせくことなかれ
とおのきもちかづきたるもちづきは
ひにはじまりひにおわり
にしへまたひがしへまじわろうぞとちかいたるや
ゆえに
くらむるくらむるとうめももさくらのはのいかに
あかるきことよな

白穂の湖 水瀬


湖上の環に集まるは
誕生の花言葉達
憂いて
ささやき
揺らいで
はためき

はらるらら

次へ
次へと
生まれては
咲き
誇り
散り逝き

また
水冠は揺らぎ
風に恵まれて



はなやいでいく
一片連れて

午前四時の肖像 ハダリィ


薄曇り色の想念は詰る所を識らず
朝つ方に往く人の感情を知らず

熱望する事に脈は絶えた

晴れ渡る

消費状態の飽和に
燃える世界の狭間がある

そこには

永遠も尽きた
ただの窓辺が置いてある

そこに

肘を付いた痕だらりと腕を下げて
燃える世界の眠る合間に吹き通る風を

冷たく受け止める
血の通い続けるわたしの手の甲がある

人間の

流線を追いかけては筋を引く

進化と成長と発展の火種を持つ細胞が
火を点ける事に飽きた時

一体わたしはどうなるのか

お誕生日会のディナー(改稿) 古月


とんとん
とんとん
浴槽で眠る
生まれる前に戻りたくて

とんとん
とんとん
ぬるい水に身を沈めて
私はまるい夢を見る

このところの私はといえば
いいかげん私に嫌気がさしていて

両目はなんにも見ていないし
耳はなんにも聞きたくない
口を開けばいやなことばかりで
立派な手足も使い途がない

だから私は生まれる前の
私になれない私になりたい

とんとん
とんとん
蓋が音を立てて
湯気がこぼれて
溢れ出しそう

テーブルにはもうみんな勢ぞろいで
背筋を伸ばしてお行儀も良い
毛足の長い真っ白な犬と
縫いぐるみのような猫は談笑して
銀色の鱗がまぶしい魚は
椅子の高さが少し足りない
窮屈そうに羽を畳んだ
くちばしの長い気取り屋の鳥が
隣で控えめに咲く赤い花に
目配せしては囀ってみせる
やっぱり長生きはしてみたいので
黒い蝶には席はなかった

そこにお母さんがやってきて
さあさあ皆さん始めましょうの声
お風呂場の隣がお台所で
本当によかったと私も安心

さて紳士淑女の皆皆様方
なんと今宵のお御馳走
まるまる一週間寝かせてあります
一週間も ほほう
ため息がこぼれて よだれも少し

とんとん
とんとん
もういいですよと
私の合図で
お鍋がきます

犬 猫 鳥 花 みんな大好きで
今度は誰の子供になるかしらね
いやいや魚も捨てがたいって
お母さんが笑ってお味見

それでは皆様お待ちかね
楽しいお誕生日会の始まりです
けれどなんだか様子がおかしい
犬は骨をしゃぶってばかりで
猫はさっそく舌をやけどした
魚はぴちぴち跳ねるばかりだし
鳥のくちばしはスープをこぼす
蝶はひらひら窓の外だし
ねえ どなたかいらっしゃらない?

とんとん
とんとん
擦り硝子の向こうで
声がして

とんとん
とんとん
いい加減に
のぼせるわよ
だなんて

またお母さんの子供に生まれて
鳥にも魚にもなれないまま
楽しいお誕生日会のはずが
生まれた私は息をしない

とんとん
とんとん
私の合図も

とんとん
とんとん
もう聞こえない

お誕生日会のディナー 古月


浴槽の中でさよならしたのは
生まれる前に戻りたかったから

ぬるい水の中に身体を沈めて
丸くなるのが好きだから

このところの私はといえば
いいかげん私に嫌気がさしていて

両目はなんにも見ていないし
耳はなんにも聞きたくない
口を開けばいやなことばかりで
立派な手足も使い途がない

だから私は生まれる前の
私にならない私になりたい

とんとん
とんとん
蓋が音を立てて
湯気がこぼれて
溢れ出しそう

テーブルにはもうみんな揃っていて
真っ白な毛足の長い犬と
縫いぐるみのような猫が談笑している
銀色の鱗がまぶしい魚には
椅子の高さが少し足りない
窮屈そうに羽を畳んだ
くちばしの長い鳥は気取り屋で
隣で控えめに咲く赤い花に
目配せしては囀ってみせる
やっぱり長生きはしてみたいので
黒い蝶には席はなかった

そこにお母さんがやってきて
さあさあ皆さん始めましょうと言うと
お風呂場の隣がお台所で
本当によかったと私は思った

まるまる一週間寝かせてあります
一週間も ほほう
ため息がこぼれて よだれも少し

とんとん
とんとん
もういいですよ
私の合図で
お鍋がご到着

今度は誰の子供になるかしらね
犬 猫 鳥 花 みんな大好きで
いやいや魚も捨てがたい
お母さんが笑って味見して

最初の一口を楽しみにしていた
お客さんは大騒ぎした

とんとん
とんとん
いい加減に
のぼせるわよ
だなんて

鳥にも魚にもなれなかった
生まれた私は息をしないけど
またお母さんの子供に生まれて

とんとん
とんとん
私の合図も

とんとん
とんとん
もう聞こえない

ウィバーン 水瀬


尻尾にアンプを載せて
雲をかじりながらウィバーン
空色の空を颯爽と游ぎながら
ご機嫌なミュージシャン気取る